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執筆者の写真池永敏之

「思い込み」って怖いですね

更新日:2022年8月10日


 経理業務で数字が合わない時は、「・・・のはず」「・・・に違いない」という根拠のない思い込みが根っこにあることが多い。思い込みが強く根を張っていると、いつまでたっても原因が見つからず、大変苦労する。


 当期の収支を正しく入力すれば、正しい「収支差=当期損益」が出るという思い込みは、複式簿記では大変な過ちを引き起こす。家計簿は全てが現金取引なので、給与収入から生活費を差し引いた残りが現預金残高と一致すれば、記帳と収支計算が正しいことがわかる。しかし複式簿記では、買掛金や未払金など、現金支払いが済んでいないものも費用に計上するし、売掛金や未収金など、入金のないものも収入に含めるので、当期の損益と現預金残高は一致せず、記帳や損益計算の正誤を確認することができない。


 このため期末日において、勘定科目の借方及び貸方の合計残高が貸借一致していることを確認したうえで、「収支(損益計算書)」と「資産・負債及び資本(貸借対照表)」を作成する。そしてそれぞれの収支や貸借の差が一致したとき、はじめてこの差が当期損益となる。


 期中に行った仕訳は、勘定科目ごとに分類され、総勘定元帳に綴られる。この元帳の各勘定の借方と貸方を合計したものを合計残高試算表と呼ぶ。この試算によって貸借が一致しなければ、正しい損益は把握できない。あわてず、段階を踏んで作業しながら数字を確認していくことが、いちばんの近道となる。


 経理事務は、緊張感をもって行わないと、数多くの落とし穴が待っている。

 急いでいる時はとくに、数字の確認を怠る、途中の手続きを省略する、伝票の入力漏れ、誤入力、転記ミスといった誤りを犯しやすい。これらは全て私が経験したことだ。


 お恥ずかしいことに、私はこれまで「法人=青色申告」と思っていた。「青色か白色かを選べるのは個人事業者だけ」という思い込みだ。法人は社会保険が強制適用されるので、どの企業も企業会計原則に基づき必要な帳簿を備えて経理業務を行い、青色申告する必要があると思っていた。


 青色申告では、21年が100万円の赤字で、22年が100万円の黒字の場合、21年の赤字と22年の黒字を相殺して、利益をゼロとし、22年の法人税が免除されるという「繰越欠損」が認められている。それでは、22年が50万円の赤字だった場合はどうか。赤字は150万円となって23年に繰り越され、黒字が出た年に差し引いていく。期間は10年間で、この間ずっと赤字が続けば差し引く利益がないまま21年の繰越欠損金100万円は消滅する。22年の繰越欠損金50万円も同様に10年でなくなる。


 私が令和3年度の途中から経理業務の委託を受けた法人は、6月末で決算を行い、40万円の利益を出した。同法人はH30年度に300万円の損失を出しているので、繰越欠損金制度が利用できれば、R2年度の税金を還付してもらい、R3年度は法人税がゼロとなる可能性があるので、その旨を先方に連絡した。しかし念のため昨年の申告書を確認したところ、何と、白色だったので、急いで先方に訂正の連絡を入れた。繰越欠損金制度は、損失を出した年に青色申告の届出がないと適用されない。これから届け出ても、後の祭りということである。


 経理・税務申告業務は、確かな情報に基づき、必ず検証を行い、思い込みを未然に防がねばならないとつくづく思った。


〈あとがき〉

●少子化で大学受験が容易になったという思い込み

 1970年の18歳人口は1900万人。当時の大学進学率は約35%だから665万人が大学へ入った。

 2020年の18歳人口は1131万人と少ないが、大学進学率は約60%に上昇したので680万人が大学へ入っている。

 受験者は680万ー665万=15万人も増えていて、受験競争はむしろ激化した。大学の数は増えて全入時代となったが、受験者の多くは難関大学を目指すので、難易度は上がっているはずだ。

 18歳人口は減ったけど、昔よりも今の方が受験者が増えたので、大学入試は厳しくなっているのだ。思い込みで「大学は入りやすくなっている」などと口にすると、子や孫に怒られるので注意した方が良い。


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