企業会計原則に準拠した経理処理の中には、一般の人には理解しにくいケースが多い。
たとえば、返さなくてもいいお金が他社から振り込まれたら、貴方はどのように扱うだろうか。恐らく10人のうち9人までが収入扱いされるだろう。
次の2つのケースを見て頂きたい。
〈ケース1〉
県民共済では、掛金の割合に応じて年に一度、割戻金を支給している。
これは、「決算で利益が出ると、共済組合が加入者に取り過ぎた掛金を払い戻す」ものだ。
共済組合の場合、こうした事業利用分量配当金は税制上で損金算入が認められている。
これによりMさん(個人事業主)は組合から2,000円を受け取った。
〈ケース2〉
A社は2018年の1/1にB社との間で自社工場に5年間(2018年~2022年まで)の火災及び地震保険契約を結び、保険料500万円を一括で支払った。
しかし2021年にC社が割安な保険料を呈示してきたので、12/31にB社の保険を解約して、2022年1/1からはC社の保険に乗り換えることにした。
これにより、B社からA社に未経過となる2022年の1年分の保険料100万円のうち、解約手数料を差し引いた90万円の解約返戻金が支払われた。
【問い】
〈ケース1〉のMさんは2,000円を雑収入に計上するが、〈ケース2〉のA社は解約返戻金をどのように経理処理すべきだろうか。
〔ヒント〕
A社が保険料500万円を一括で支払ったとき、どのように経理処理したかで答えが違ってくる。
〔解答〕
1. 5年間の保険料500万円を2018年の経費に全額計上した場合。(現金主義会計)
(借方) 預金90万円/(貸方) 雑収入90万円
2. 5年間の保険料500万円を2018年の経費に全額計上せず、次のように仕訳した場合。
(発生主義会計)
・1年目(借方) 保険料100万円/(貸方) 預金 500万円
(借方) 前払保険料400万円/
・2年目(借方) 保険料100万円/(貸方) 前払保険料100万円
・3年目(借方) 保険料100万円/(貸方) 前払保険料100万円
・4年目(借方) 保険料100万円/(貸方) 前払保険料100万円
・2021年12/31
(借方) 預金90万円/(貸方) 前払保険料100万円
(借方) 支払手数料10万円/
〔解説〕
〈ケース2〉の場合は、「発生主義会計」に基づく経理処理が望ましい。現金主義だと5年分の費用を2018年度に全て負担させることになり、「各年度の費用は当該年度の収入に対応させるべき」とする損益計算書の原則に反する。また費用は各年度に公平に振り分けることが管理会計上も望ましい。
お金が入ったのに収入にならないのは変だと思う方は、未経過分の保険料はB社に預けていたものというように理解してください。預けていたものが戻ってきた場合、収入にすることはありませんよね。
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